屋敷囲みの石垣と藻小屋を見たくて訪れた、木坂の集落。
対馬の中部、西海岸にあります。
谷がほぼ東西に走り、西側の海岸から強風のあおりを受けそうな地勢です。
河川沿いに、石垣に囲まれた屋敷が並んでいました。
石材は砂岩なので府中とは様相が異なり、府中とは積み方も違うように感じました。
鬼門除けがあるのは、府中の石垣との共通項ですね。
藻小屋は、海岸に作られた海藻肥料の貯蔵小屋。
対馬は、島土の約89%が山地で、耕地が少なく食料自給が難しい島。
収穫を増すため海藻が肥料として使われ、それを収蔵するための建物でした。
江戸時代初期には存在した説があるようですが、成立については今のところはっきりせず。
西海岸は東海岸に比べて地形がおだやかで可耕地が多いことから、藻小屋も多く分布するのかもしれません。
石壁で小屋を囲む文化は、地中海域や韓国の済州島、福建省や台湾で見られるそう。
後日研究者の先生に聞いたところ、済州島のそれと似ているそうで、
韓国からの影響を強く示す文化・技術のひとつといえそうです。
もうちょっとゆっくり見たかったのですが、、、時間がなくて残念でした。
木坂の集落では、対馬の集落の在り方もわかったのもおもしろかったです。
海神神社の氏子の住む集落。
海神神社は対馬国一ノ宮と呼ばれ、神功皇后が新羅遠征の帰路に寄ったとも伝わります。
昭和の河川改修前の左岸側に、板倉が並びます。
川向こうは不浄の地で、出産や葬いも左岸側だそう。
反対に、神社のまつりごとなどは右岸側で行うそうですよ。
円錐形の石積み(ヤクマの塔)を積み上げて、男児の成長や五穀豊穣などを願う伝統行事「ヤクマ祭」が
現在も催されている地域でもあります(国の選択無形民俗文化財「木坂・青海のヤクマ」)
初めて知った「両墓制」。
海辺にご遺体を土葬する「埋め墓」、寺に「拝み墓」という墓石だけを入れたお墓を置くそうです。